第63章 勝負の時
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天「うし。こんなもんだろ。」
天元はパンパンと手を払い叩く。
すると、目の前の川にはプカッと魚達が浮かび始めた。
辺りに響き渡ったバチバチバチバチ!!という騒音は、天元によるもの。
小さな火薬玉を鳴らし、魚を気絶させて捕らえる、という作戦だ。
天「さすが俺様。あとは網で掬い上げりゃ、ちょろいもんだぜ。」
天元が網を手にして川に入っていく。
ひょいひょいと掬っていけば、あっという間に魚籠は一杯になった。
天「優勝間違いなしっと。
…お?どうかしたか?」
周りには人影はないが、天元は藪の方に声をかける。
すると、その声に反応するかのように、ガサっと薮が揺れた。
『さ、さすが音柱様。
いつからお気づきになったのですか?』
そう言って、ひょこっと顔を出したのは
天「いつからって、今来たばかりだろ。千坊。」
千坊と呼ばれたその姿は、千寿郎だった。
近くで釣りをしていた千寿郎は、いきなり鳴り響いた騒音に驚き、何事かと様子を伺いに来たのだ。
千「いきなり大きな音が響いたので、何かと思いました。」
天「お前がいたのはその先か?
惜しかったな。もう少し近けりゃ、俺のおこぼれもあっただろうが…」
そう言いながら、天元は魚籠をトントンと打ち付け、蓋を閉めて川の中に入れる。
千寿郎にもチラリと見えたが、魚籠の中にはたくさんの魚が入っていた。
千「今の音で魚を獲ったのですか?」
天「んぁ?これは爆竹みたいなもんだな。
音で驚かせて、気絶した魚を獲るってのが俺の作戦なわけ。」
天元の作戦を聞き、千寿郎は目を輝かせる。
千「音だけでですか⁉︎それは凄いですね!!
音柱である宇髄さんにしかできない技なんじゃないでしょうか!」
天「え…ま、まぁな!!俺くらいにもなりゃ、このくらいちょろいぜ!!」
千「凄いなぁ…!もう一度、見せていただくことはできますか?」
千寿郎の口からは、出るわ出るわ褒め言葉。
天元も流石にどうしたのかと目を点にしていたが、これだけ褒められれば嫌な気はしない。
むしろ上機嫌になっていく一方だ。