第63章 勝負の時
天「まさか、煉獄は俺に勝てる気がしないのか?」
杏「!!!」
天「煉獄なら、泰葉さんは誰にも渡さない!!って1番食いついてくれると思ったんだがなぁ。
なんだ、意外と怖気付いているのか。」
もちろん、これは誰でも気づくような煽りである。
泰葉もさすがに苦笑いを浮かべたが、杏寿郎の額にはピキッと筋が立っていた。
杏「もちろん。泰葉さんを誰かに渡す気など毛頭にない!
特に宇髄!君にはな!」
ピリピリとした空気が漂い始める。
喧嘩…とまではいかないだろうが、このままだといけない気がした泰葉は、とりあえず落ち着くようにと杏寿郎を宥めた。
「で、でも、美味しいお魚にもありつけるなら…ね、楽しみだわ。」
天「場所にもよるが、イワナ、ヤマメ、アマゴ、アユ…。
結構な種類がいるもんだ。誰でも一匹は釣れるだろう。塩焼きは美味いぞー。」
杏「むぅ。そう言われては…。
しかし、俺が勝てば良い話だ!負けるわけにはいかない!!」
天「おう!その意気だ!
ま、俺が勝たせてもらうがな!!」
だがそこで、泰葉にはふと疑問が生まれた。
「あ、あの。もし私が優勝したら、どうなるんです?」
優勝者は泰葉と一日中好きに過ごせる。
となると、泰葉が優勝した場合はどうなるのだろうか。
自分に自分を与えられては、おかしな話だ。
天「……そん時はそん時だ。」
天元はスン…と表情を無にし、そう言い捨てて釣り竿などを選び始める。
そう、これは泰葉が優勝するなど、微塵も考えられていない大会なのだ。
それを悟った泰葉は、急に頭に血が昇り始めた。
ここまで馬鹿にされて、黙っているわけにはいかない。
完全に泰葉の意思は無視され、景品となるならば、自分が勝ってしまえばいい。
その時には、皆に一つずつ言うことを聞いてもらうことにしよう。
「私だって!可能性あるんですからねっ!」
泰葉はそう言って、天元に負けじと竿と魚籠を選んでいった。