第63章 勝負の時
天元は溌剌と声を上げた。
宇髄邸の敷地も広い。
柱稽古では山二つを使ったほどだ。
その中には川も数本通っており、1番大きな川には魚がいた事を泰葉も覚えていた。
天「一応、人数分の竿と魚籠は揃ってるが手段は問わない。
時間内に1番魚数が多かった奴の勝ち。」
杏「大きさ、重さは問わないんだな?」
天「あぁ。でも、後々食う事考えたらでかくて丸々してる方が美味いだろうがな。」
天元はそう言うと、ニヤリと口角を上げる。
天「もちろん、大会って言うんだから景品もないとつまらねぇ。」
「確かに。」
雛「…天元様。その景品については伺っておりませんが。」
天元の言葉にハッと雛鶴が口を開く。
どうやら、これについては誰も知らないらしい。
天「景品ならもうここにある。
泰葉!お前だ!!」
天元の指先がビシッと向いた先は泰葉。
急に呼ばれ、ビクッと肩を震わせた。
「はい?」
杏「…宇髄!!気がおかしくなったか!」
もちろん杏寿郎も黙っちゃいない。
その様子に、天元ははぁ…と息をつく。
天「何回も言わせるなよ。景品は泰葉。
優勝者は一日泰葉を好きにできるって事だ。」
槇「なっ…」
千「それはっ…」
流石に槇寿郎と千寿郎も口を挟む。
息子、兄の婚約者である泰葉を自分達が好きにできるとは、許され…
槇「本当かっ⁉︎」
千「本当ですかっ⁉︎」
杏「父上!!」
「千寿郎くん⁉︎」
まさかの反応に、泰葉も杏寿郎もギョッと声を上げた。
「し、しかし、私が景品なんて…。これでは誰も勝ちたいとはならないんじゃ…」
優勝者の景品とは、本来ならばなんとしてでもほしい物である。
泰葉はそれには値しないのではと、慌てて手を挙げた。
それを聞いた杏寿郎は目を丸くして泰葉を見る。
杏「泰葉さん!それはない!
むしろ、あれを見るんだ!」