第63章 勝負の時
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槇「こんなに朝早くなければダメなのか?」
杏「宇髄の鴉がどうしても夜明け前にと。
…やはり暗いと冷えるな。泰葉さん、大丈夫か?」
杏寿郎は槇寿郎の質問に答えると、泰葉の肩に腕を回し摩ってやる。
「杏寿郎さん、ありがとう。
でも、芋堀りってこんなに早くないといけないなんて、知らなかったわ。」
まだ薄暗い夜明け前。
泰葉達は、本来なら人が通らないであろう道を進む。
この時間に来いと指定したのは宇髄天元。
芋掘りにと誘われた煉獄家一行は、朝食を済ませてから向かおうと計画していた。
しかし、前日夕方『夜明ケ前ニ来イ!』と天元の鴉、虹丸が伝えに来たのだ。
漸く宇髄邸が見えると、門の前で須磨がこちらに向かって手を振っている。
泰葉はそれに応えるように手を振った。
須「朝早くからありがとうございますぅ!
天元様ったら、訳も話さないでこんな時間に指定するもんですから、私たちも戸惑っちゃって!」
杏「いや、宇髄家の育てる芋は大層甘い!それを分けていただけるなら、早起きなど苦ではないので、気にしないでいただきたい!」
「おはよう御座います。でも、随分と早くから芋を掘るのですね?」
須「あぁ…、それはぁ…」
そう話していると、ドサっと音がしていつの間にか、天元、雛鶴、まきをが門の前に立っていた。
天「わりぃが、今日の芋掘りは無しだ。」
開口一番に放たれた言葉。
須磨はすかさず、サッとまきをの隣に下った。
槇「芋掘りは無しとは、どういうことだ?
俺たちを朝早くから呼んだのは君だろう。」
天「あぁ、そうなんだがな。
おい煉獄。そんな顔してくれるなよ。」
申し訳なさそうに片目を瞑り、頭を掻く天元。
天元の言葉で杏寿郎に視線を向けると、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。