第62章 季節外れの春の訪れ
・・・・・。
杏「む。少女達、少し背丈が伸びたか?以前よりも座高が高くなっている気がするな!」
3人「はい!そうなんです!よくお気付きですね!!」
その後、少し気まずい空気になったが、杏寿郎が3人娘の背の話題へとすり替える。
本当に、気回しの出来る人だなぁ…とつくづく感心する。
杏「以前は胡蝶よりも小さかったが、今や追いついてしまいそうだな!!」
はははと笑う杏寿郎は、うまく話題が変わったと思っているが、どうやら新たな地雷を踏んでいるようだ。
し「それは、私に喧嘩を売っています?買いますけど。」
にっこり笑うしのぶ。
しかし、その笑顔には影がかかっている。
杏「すまん!胡蝶が小柄だとかそういう意味ではない!少女達が大きくなったと思っただけだ!」
し「分かってますが、引き合いに出されて、つい。」
また不穏な空気が流れ始める。
炭治郎たちは皆黙っていた。
…余計なことに巻き込まれたくはない。
「あっ、そうだ!私たち今週末、宇髄さんのところに、さつまいも掘りに行くの。たくさん採れたらお裾分けするね!」
このままでは…と泰葉は次の話題を出す。
し「あら、そうなのですか。彼のところのさつま芋は甘くて美味しいんですよ。楽しみにしていますね。」
泰葉の話題転換に、しのぶはいつもの調子に戻っていく。
一先ず良かった、と胸を撫で下ろす。
炭「俺たちの家の近くには春には山菜、秋にはきのこが採れる場所があったなぁ…。まだ変わらずあるだろうか。」
カ「じゃ、じゃぁ、今度私もそこに連れて行って…。」
炭「え…?」
炭治郎が懐かしそうに話していると、隣のカナヲが急に、連れて行って欲しいと強請った。
まさか、そんな頼みが来るとは思わず、炭治郎は目を丸くしてカナヲを見る。
声には出さないものの
周囲も驚き視線を向ける。
カ「…みんなでまた集まれるように…沢山あったら…良いかなって。」
こんなに一斉に視線を浴び、消え入りそうな声。
でもそれは間違いなく、自分の意思で言ったこと。
炭「もちろん!片付いたら迎えに行くよ。そうしたらみんなできのこを採りにいこう」
炭治郎は嬉しそうに微笑み、カナヲはその笑顔に応えるように、にっこり笑って頷いた。