第62章 季節外れの春の訪れ
そんなアオイを炭治郎と善逸は怯えた顔で見ているし、
杏寿郎はというと、腕組みをして楽しそうに笑っている。
一体どうしたと言うのか…。
アオイの前には誰かが正座しているようだ。
泰葉がその姿は誰なのかを覗き込むと、そこにはほんのり青みがかった髪に目がぱっちりした美少…女かと思ったが、上半身裸でバキバキに割れた腹筋。
それは、美少年の姿となった伊之助だった。
泰葉も久しぶりにこの姿を見る。
「…あら、伊之助くん?」
自由奔放、猪突猛進の彼が正座をし、少し俯いて反省しているなんて珍しい姿だ。
「どうしたのかしら。」
し「いつものことですよ。」
ふふっとしのぶは笑う。
ア「今から昼食にするんです!みんなで食べようと思って配膳しているのに、よそった側から食べられてしまっては、いつまで経っても食事にできないでしょう!!」
伊「わーったよ!!悪かったっつってんだろ!アオコはガミガミうるせぇぞ!!」
伊之助の怒られている理由は、どうやら摘み食いが原因らしい。
まぁ、確かによそってもよそっても、そこから食べられてしまっては…。
ア「煩くさせているのはどこの誰ですか!!」
目鯨立てて怒るアオイ。
すると、伊之助も黙っていなかった。
伊「うるっせぇ!!お前の作る飯が美味すぎるのがいけねぇんだろ!!」
「あら。」
杏「む。」
『あ…』
様子を見守っていた者達は手を口に当てる。
それは、アオイのご飯がとても美味しいから、ついつい待てなくなってしまう…。
そういうことだ。
アオイの顔はみるみる内に赤く染まり、くるっと振り返りどこかへ行ってしまった。
流石に伊之助は、アオイの気に障ることを言ってしまったかと、少し不安気だ。
だか、アオイは割とすぐに戻ってきた。
その手には丸いお盆を持って。