第62章 季節外れの春の訪れ
杏寿郎と泰葉が2人の世界に浸っていると、その後ろからコホンと咳が聞こえる。
し「万年発情期でお盛んなのは結構ですが、やるなら他でやってもらえませんか?」
それは、ピキッと筋を立てたしのぶのもの。
そのまた後ろでは、お盆にお茶を乗せて顔を真っ赤にしているアオイの姿。
どうやら、2人の様子を見て入るに入れなかったようだ。
「し、しのぶさんっ!いつからそこに?」
杏「聞こえてしまっていたか!まだその距離では届かないと思っていたがな!」
「杏寿郎さんも知っていたの⁉︎」
随分と恥ずかしい会話を聞かれてしまった…と赤面する泰葉。
聞こえていたのは、しのぶだけではないのだが。
その事実は知らぬが仏。
し「全く、煉獄さんに万年発情期を迎えられたんじゃ泰葉さんの身が持ちませんよ。
この際去勢しておきます?」
姉として慕っている泰葉を抱き潰されたら堪ったものではない。
そうなる前にその欲が湧かないようにしてやろうか…。
しのぶに黒い影が纏われる。
杏「ははは!!去勢か!まだ子も成していないのに、それはキツいな!!」
しのぶの言葉をこんなにも明るく躱せるのは杏寿郎くらいだろう。
周りは皆ハラハラしながら見ていた。
1番怯えていたのは善逸。
彼はしのぶが割と本気でそう思っているというのを、音で感じ取っていたのだ。
善(しのぶさん、割と本気だよ〜。去勢⁉︎去勢ってどうするんだよ⁉︎取るの⁉︎取っちゃうの⁉︎)
善逸が去勢というものがどんなものか分からぬまま、取り敢えず己の大事な部分を取られてしまうのを想像した。
もうそれだけで全身に鳥肌が立つ。
そしてブルブルと首を振り、だんだん青ざめていった。
善(それは流石の炎柱も失神もんだよ!!)
そんな善逸を禰󠄀豆子は本気で心配していた。