第62章 季節外れの春の訪れ
泰葉の耳元に杏寿郎の声が届く。
そして、みるみるうちに顔が真っ赤に変化していくのだった。
その様子を見ていたのは、
炭治郎と善逸。
炭(ん?泰葉さんから恥ずかしさと動揺の匂いがする。)
炭治郎はその程度だが、1番顔を引き攣らせていたのは善逸だ。
善逸は耳がいいので、少し離れたところの泰葉達の声など、意識しなくても会話レベルで聞こえてきてしまうのだ。
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杏『では、我々には春しか来ないな…。』
『え?』
杏『俺はずっと泰葉さんに恋をしている。
それに、番(つがい)の猫を求めて発情期を迎える猫の季節を春というのなら…。』
『俺も泰葉さんを求めてずっと発情期を迎えている様だからな…』
『や、やだ、杏寿郎さんっ』
善逸が渋い顔で2人を見ると、杏寿郎が泰葉の腰を引き込んで見つめ合っている。
杏寿郎は少し目を細め微笑み、泰葉は熱でもあるんじゃないかと思うくらいに顔が真っ赤だ。
善(うげー…、とんでもねぇ炎柱だ!!)
善逸はペッと出もしない唾を吐く仕草をした。
禰󠄀「善逸さん、どうしたの?すごい顔よ?」
禰󠄀豆子に声をかけられハッとすると、目の前に映るのはキョトンと小首を傾げる禰󠄀豆子の可愛らしい顔。
キラキラとしたものが辺りに散らばって見える。
善(くそぅ!炎柱…万年発情期だとぉ⁉︎俺は禰󠄀豆子ちゃんを大事に大事にするんだ!発情…なんて…!!する?する…か。)
だんだんと更に酷くなる善逸の表情。
禰󠄀豆子はそれに伴い更に心配する。
禰󠄀「善逸さん?」
禰󠄀豆子が手を取って意識を呼び戻そうとするが、それよりも先に善逸の肩にポンと手が置かれた。
善逸がビクッと肩を震わせ、ギギッと振り返ると
般若の様な炭治郎の顔。
炭「勘違いだと思うんだが…。
禰󠄀豆子のこと、邪な目で見ていないよな?大丈夫だよな?」
善「だだだ大丈夫です。お義兄さん…。」
炭「お義兄さんじゃない!!」