第8章 金魚
「あ、ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げる泰葉。
はぁ、とため息をつく槇寿郎。
槇「あんな態度では取って喰われてしまうぞ。」
煉獄家3人は少し早めに街に着いていた。
最近瑠火の墓にも行けていなかったので、朝早くでて、手を合わせてきたのだ。
槇寿郎も、街に出るのは久しぶりだった為、色々と見て回ろうと歩いていると、道のど真ん中で手を握られてる女性を見つけた。
少しいつもより着飾られ、可愛さよりも美しさの方が優る女性が泰葉だと、3人はすぐに分かった。
杏寿郎が額に筋を立て、割って入ろうとしていたが、それを槇寿郎が制した。
槇「ここは、俺が行こう。」
そう言って、静かに近寄って…
今に至る。
槇「もう少し気をつけなさい。」
「はい。」
その様子は親子の様だった。
詳しく何があったか分からなかったが、杏寿郎と千寿郎は顔を見合わせて笑った。
早く待ち合わせることができたので、4人は早速、呉服屋に向かう。
千「それにしても、泰葉さんの雰囲気がちがったので、驚きました!」
杏「あぁ、いつもは可愛さの方が出るが、今日は美しさの方が出ているな!」
千「泰葉さんは、紅梅色もお似合いですね!」
杏「あぁ!そうだな!とても似合っている!」
移動中、泰葉を褒めちぎる2人。
泰葉は、もうやめて…と顔を赤くして槇寿郎に隠れる。
槇「もう、それくらいにしてやりなさい。お前ら、特に杏寿郎の声はデカいんだ。
みんなが見ている。」
気づけば、すれ違う人が4人を見ている。
いつもは兄弟は言い寄られて大変だが、父といるので安心だ。
たまに、槇寿郎に「うちの娘を息子さんと!」と、直談判に来る人もいたが。
槇「ところで、泰葉さんは振袖は着ないのか?」
泰葉は、外出する時は訪問着を着ている。
その方が袖が短く、動きやすいからだ。
または洋装のワンピース。
振袖は、それこそお見合いの時にしか着ない。
…そもそも、年齢的に振袖はいけないと思っていた。
「そうですね。
この方が動きやすいし、…もう、年齢的にも振袖は…25歳にはいけないと思うので…」
だんだんと小声になっていく。
そして、その言葉に槇寿郎は驚いた。