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太陽の瞳 【鬼滅の刃】

第61章 安堵



杏寿郎が居間に行くと、槇寿郎が本を読んでいた。
杏寿郎が来たのに気づき、本に栞を挟み閉じる。


杏「そういえば、富田屋で鬼殺隊士だったものに会ったと言っていましたが。」

槇「あぁ。桐谷巧くんといってな。お前とは無限列車の前日まで一緒だと言っていた。」

杏寿郎はその話を聞いて、彼のことかと頷いた。

杏「彼のことはよく覚えています。優しい、人として立派な男だったと。」


槇寿郎が巧とどんな話をしていたかを話していると、泰葉がお新香と、お茶を持ってきた。


「もう間も無く食事になりますが、それまでちょっとつまんでてくださいね。」


卓袱台の上に置き、ニコッと笑ってまた台所に戻った。
ありがとうと礼を言い、槇寿郎は泰葉の後ろ姿に目を細める。



槇「泰葉さんが無事に帰ってきて本当に良かった。」

杏「俺が彼女に怪我をさせるとでも?」

槇「いや、俺たちはお前がいるから大丈夫だろうと思っていたんだ。
だが、富田屋のイトがな…」

杏「女の執念は恐ろしいと…。」


少々気まずそうに頷く槇寿郎。
なぜか、その執念を知っているかのように見える。


杏「父上、その執念に心当たりがおありですか!!」



ぐっ、と茶を啜ろうとした槇寿郎が動きを止める。
心当たりがあるというか、何というか。

若かりし頃、あの定食屋に通っていた時から、イトは確かに槇寿郎に好意を寄せていたようにも思う。
さっぱりとした性格で、明るい性格には好感が持てた。


しかし、鈍い槇寿郎はその気持ちが何かも分からず、イトとの関係もこんなもんだと思っていたのだ。
そこで、瑠火との縁談があり、一目惚れした槇寿郎は瑠火と結婚をし、イトにも紹介した。


何となく、苦い顔をしていたのが忘れられなかった。



そして、今になって気付く、彼女の想い。
しかし、そんな彼女ももう他の男のものになってしまった。



『好きな男を他の女性に取られるって、そりゃぁ抉られる様な辛さよ。』




あれは、間違いなく槇寿郎に向けての言葉だろうと苦笑いした。


槇「女と男というものは、なんとも難しいものだ。」




呪うなり祟るなりしてくれれば良いさ…。
槇寿郎は茶を啜り、白菜のお新香をシャク…と噛み締めた。




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