第61章 安堵
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千「…それ、綺麗ですね。兄上からですか?」
夕飯の支度をしている時、千寿郎が首元をトントンとして泰葉に尋ねる。
「へへっ、そうなの。今日の朝、貰ってね。」
千「今日の朝ですか?」
「うん。婚約指輪では、宝石の付いた指輪をずっとはしていないだろうからって。」
千「兄上、色々考えてるんだなぁ…。」
千寿郎は、兄が泰葉と出会って随分と変わったように思う。
けれど、こうして贈り物をしたり、恋人としての顔を垣間見ると、それは想像できない姿でもある。
千「それは、ルビーですか?」
「えぇ。赤い宝石だから、ルビーだと思うわ。」
千寿郎は目を閉じて、んー…と少し考えた後、ふふっと笑った。
千「先日、図鑑の端書にあった、宝石の石言葉というのを見ていたんです。
それにルビーも載っていました。確か…」
豊かな感受性
情熱
千「愛の炎。」
千「兄上らしいですね。勝利、愛情、活力の意味も多くあるので"炎の石“とも呼ばれるそうですよ。」
千寿郎の頭にはどれだけの知識が入っているのだろう。
ルビーだと知ってから覚えるなら納得だが、ただの知識として覚えておくには、詳しすぎる。
「千寿郎くんは物知りね。炎の石…か。杏寿郎さんはもしかして、自然とこの石に惹かれていたかもしれないわね。」
彼のことだから、割と即決なのだろうな…と想像する2人。
数時間かけて吟味しているのは、考えられなかったのだ。
その姿を知っているのは不死川兄弟と義勇だけ。
千「でも、とてもよく似合っていますよ。泰葉さんは肌が白いので、とても良く映えています。」
「ありがとう、嬉しい。」
千寿郎が微笑むと、泰葉も微笑んだ。
つくづく、煉獄家に来ることができた幸せだと思う。
さつまいもご飯が炊き上がった匂いがする。
それに釣られたのか、杏寿郎がやってきた。
杏「いい匂いがする!」
「クチバシが長いですね。」
杏「む。この匂いは…さつまいもご飯だな!」
泰葉と千寿郎がククっと笑うと、杏寿郎は嬉しそうに居間へと向かった。