第61章 安堵
もう少しで煉獄家といえど、まだ外である。
そこで溌剌と昨晩の報告をし始める杏寿郎を泰葉は目を丸くして止める。
それには、取り乱しつつあった槇寿郎達は目が点だ。
槇「何を言っているんだ、杏寿郎。そんな話は聞いていないぞ。」
顔を真っ赤にする千寿郎に泰葉はごめんね、ごめんね、と平謝りするしかない。
杏寿郎も自分が何か勘違いしているのだと気づき、少し頬が赤くなる。
杏「いや!そうでしたか!!
何故2人は泰葉さんにそんなに心配を?」
槇「まぁ、とりあえず家に入ろう。」
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槇寿郎と千寿郎は富田屋での出来事を話した。
槇「…というわけで、杏寿郎はその心配がないだろうが泰葉さんが怪我をしたり、嫁に来るのが嫌になってしまったのでは…と心配だったというわけだ。」
杏「なるほど!!」
「ご心配をおかけしました。」
槇「いや、俺たちが勝手に騒ぎ出しただけだ。泰葉さんは気にしなくていいぞ。」
杏寿郎達も昨日の出来事を槇寿郎達に話した。
もちろん、蕎麦屋の一階での話まで。
千「イトさんの仰っていた通り、女の執念…というのは、何とも…」
ぶるっと身震いを起こす千寿郎。
「でもね、ちゃんと婚約者の方が連れて帰ったそうよ。
…またやり直せると良いんだけど。」
槇「泰葉さんも、何か悩むことがあったら、話せる人に話すんだぞ。ここには男しかいないから、言いづらいだろうが…」
槇寿郎はこんな時、瑠火がいてくれれば…と心から思う。
「はい。杏寿郎さんも同じことを言ってくださいました。やはり煉獄家の皆さんは優しいですね。」
ふわりと笑う泰葉に槇寿郎と千寿郎は漸く安堵することができた。
千「お二人は、そのままお蕎麦屋さんに泊めていただいたのですか?」
槇・杏「ブッ!!」
2人は啜ったお茶を吹き出した。
流石に泰葉も動揺したが、千寿郎は純粋な気持ちで聞いている。
「そうなの。私が怖気付いちゃってね。女将さんが、今日は泊まって行きなさいって。」
泰葉は当たり障りのない返答をする。
決して嘘ではない。
千「良い方で良かったですね!」
千寿郎はその答えを聞いて、満面の笑みを浮かべた。