第61章 安堵
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その頃の煉獄家は、そわそわと落ち着かないでいた。
…というのも、昨夜の富田屋での話に遡る。
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杏寿郎と泰葉が面倒なことに巻き込まれていると、頭を悩ましていた4人。
槇「まぁ、あの2人のことだ。泰葉さんだけならともかく、杏寿郎も一緒なのだから大丈夫だろう。」
巧「炎柱は優しいですが、はっきりと言える性格ですもんね。」
千「僕は泰葉さんが心配です…。」
男達は、杏寿郎がいるから…と安心したいのだろうが、唯一女性目線のイトの意見は違っていた。
イ「何悠長なこと言ってるの!」
両手を腰に当て、ずいっと男達に滲み寄るイト。
イ「女の執念ほど怖いものはないんだから!
いい?もし本当にその女性が杏寿郎くんを想ってたとしたら。
好きな男を他の女性に取られるって、そりゃぁ抉られる様な辛さよ。」
その圧は、3人に向けられている。
…向けられているのだが。
槇寿郎への圧が特段に強いのは、気のせい…だろうか。
槇「そ、それは…杏寿郎の話、だよな?」
流石に槇寿郎も恐る恐る確認を入れる。
イ「そうよ。どっかの誰かさんの話じゃないわ。
杏寿郎くんの話よ。」
もしも。
大宮薬局の息子の婚約者が、杏寿郎のことを本気だとして。
杏寿郎が泰葉と結婚すると知ったならば、どうなるだろうか。
ありもしない話を街中に喋り歩く様な女性だ。
気を狂わせてもおかしくないだろう。
イトの一言により、3人にはよからぬ妄想が広がる。
千「た、大変です!泰葉さんが、もしそれで結婚するのをやめるなんてなったら!」
槇「杏寿郎と離れたところを襲われて、怪我でもしていたら大変だな。」
巧「女の執念…」
イトは、あまりにも深刻な顔をして悩み出した3人に、少し言い過ぎたか…?と苦笑した。
槇「とりあえず、帰ってくるのを信じて待つしかない…」
そして、イトや巧と別れ帰路につく時。
要が槇寿郎の肩に止まる。
『イロイロアッテ 明日ノ朝 帰ル。』
要の言う色々。
それが2人をまた不安にさせるのだった。