第61章 安堵
杏「これを…是非いつも身に付けていて欲しい。
泰葉さんは俺のものだという証に。」
杏「泰葉さんを1番に愛しているのは、俺だという証に。」
そう言う杏寿郎の瞳が、ルビーと同じ様にキラッと輝いている。
杏「…付けてくれるか?」
「もちろん。…嬉しい、大切にするね。」
にこりと微笑む泰葉の首元に、杏寿郎がネックレスをかけた。
「…どう?」
杏「うむ!見立て通りだ。君の白い肌によく映える!」
杏寿郎は嬉しそうに頷く。
その笑顔に泰葉は余計に嬉しくなった。
ニコニコとルビーの部分に触れていると、杏寿郎が少し眉を下げてその指に触れる。
杏「本当は指輪にしようと思ったんだ。」
「…でもネックレスに?」
杏「泰葉さん、宝石がついた指輪を毎日してくれるか?
そのまま炊事をして、買い物にも出掛けて…。」
泰葉はその様子を想像した。
もしも、炊事で宝石を落としてしまったら?
指からスルッと抜けてしまったら…?
そう思うと、とてもじゃないが付けてはいられない。
「肌身離さずは怖いわ!宝石ってこれがついているんでしょう?」
杏「あぁ。もっと高価な石もあったぞ。それが付いていたら、君のことだから遠慮して飾っておくだけだと思ったんだ。」
…確かに。
泰葉なら、そうしかねない…。
「うん…。そうだったかも。」
申し訳なさそうに、微笑む泰葉。
杏寿郎はその頭を優しく撫でる。
杏「だから、日頃から付けられるものと思ってな。髪飾りよりも改めたものを贈りたかった。」
「ありがとう。私からも何か……んっ。」
泰葉が言いかけると、杏寿郎の唇が重なる。
驚いていると、ニッと笑う杏寿郎。
杏「では!毎日口付けをくれるだろうか。俺はそれが1番嬉しい!」
「ひぇ⁉︎く、口付けを⁉︎」
杏「泰葉さんから貰える口付けは、また特別だからな!」
そう笑いながら泰葉の手を取り、「さぁ、行こう」と歩き出す杏寿郎。
泰葉の心臓はバクバクと脈打ち、顔はまた茹で蛸のように染まっていた。