第61章 安堵
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「…杏寿郎さん、道、違うけど…?」
泰葉は歩いている道が、煉獄家に向かうより逸れている事に気がついた。
杏「うむ。少しばかり俺の寄り道に付き合ってくれ。」
そう言って手を引かれる様に、暫く歩くと紅葉の綺麗な丘へとたどり着いた。
「わぁ!すごい!!」
その丘からは木々の赤や黄、少し残る緑が辺りを染め、その間から楽しいひと時を過ごした街が見える。
山を登るよりは少ないかもしれないが、紅葉を楽しむにはちょうど良い加減である。
「見て見て!この木、杏寿郎さんみたい!」
杏「む?」
「殆ど黄色の葉ばかりなのに、先だけが色づいて赤いの。
杏寿郎さんのここみたい!」
そう言って自分の頭、杏寿郎の上向きになっている前髪のあたりを指す。
杏「はははっ!そういうことか!!」
色づく葉の移ろいを楽しんだ後、杏寿郎が泰葉を呼ぶ。
杏「…本来なら、昨日のうちに渡したかったんだが。」
杏寿郎が懐に手を入れて、小さな箱を取り出した。
「…それは?」
杏「西洋では婚約指輪というものが主流となってきているらしく、日本にもその真似をする人が増えているそうでな…。」
パカッとその小箱を開けると、そこにあったのは
「…首飾り?」
今指輪の話をしたので、てっきり指輪かと思った泰葉は目を丸くする。
杏「違うぞ。なんと言ったか…、あぁ、ネックレスというそうだ!」
銀のネックレスの飾りには、真っ赤な宝石がキラリと煌めいている。
杏「この宝石は、ルビーというそうだ。情熱的な愛、という意味合いを持つらしい。」
そっと小箱から取り出し、シャラっと陽光に晒す。
キラキラとして、とても綺麗だ。