第61章 安堵
「槇寿郎様や千寿郎くん…、心配してないかしら…。」
手を繋いで煉獄家に向かいながら、泰葉がポツリと呟く。
杏「そうだな…。気にはしているだろうが、大丈夫だろう!もう俺たちも大人なんだ。」
「…そう、だけど…ほら…」
杏「む?」
もじもじと言葉を濁らせる泰葉に杏寿郎は小首を傾げる。
「あっ、朝帰り…なんて…」
俯いた顔は耳まで真っ赤。
それをみた杏寿郎は目をパチパチさせた。
杏「くっ…ふふ。泰葉さんは…本当に愛いな。」
「へっ⁉︎なんで笑ってるの?」
杏「そうか。朝帰りということは…悟られてしまうやもしれんな。昨日はヤキモチを妬いたり…。」
「や、ヤキモチっ⁉︎」
杏寿郎の言葉に誰が⁉︎とでも言いたげな顔を向ける泰葉。
杏「む⁉︎よもや、まさか無意識か⁉︎
俺に女性が話しかけてくると不愉快だったと…!」
「それは……!!…そうだけど…。」
杏「それが、ヤキモチだろう?」
「ヤキモチ…そうね。ヤキモチね…」
ぶつぶつと自分を納得させる様に呟いている泰葉に、杏寿郎は不意にちゅっと口付けた。
「んっ⁉︎杏寿郎さん、ここ外…!」
杏「あぁ、外だ!!」
「は、恥ずかしいでしょう⁉︎」
少し睨む様に見る泰葉の手を握り直し、杏寿郎はニコッと笑う。
杏「こうしていれば、俺には泰葉さんがいて、泰葉さんには俺がいると示す事ができるだろう?」
「そうすれば、俺に話しかけてくる女性も減るし、君に寄ってくる男に俺は牽制できる。」
「そ、そうかしら…。」
杏「しかし、分かっててもらいたいのは、どれだけの女性が来ようと俺には泰葉さんしかいない。それを忘れないでくれ。」
杏寿郎は繋いだ手を持ち上げ、泰葉の指先に口付けた。
「…ひゃい…」