第60章 君を傷つけない為に ❇︎
口付けが深く深く…。
息苦しさを感じるが、今の2人にはその苦しささえも快感へと変わっていく…。
「んん…ふ…あ…」
部屋の中にはどちらとも言えぬくぐもった吐息と、くちゅ…という水音が響く。
灯りも消さぬまま。
恥ずかしさなどそっちのけで求め合う2人。
泰葉は杏寿郎による、蕩けそうな口付け、乳房への愛撫、秘部への十分な刺激により、もうどこを触られても快感だ。
ふー、ふー、と荒い呼吸を繰り返す杏寿郎は着物を脱ごうと帯に手をかける。
が、懐に大事なものを忍ばせていたことを思い出した。
杏(今渡すべきか…後ほどか…)
一瞬悩み、杏寿郎はそれを枕元に置いた。
急いで着物を脱ぎ去り、褌も取り払えば、一糸纏わぬ肉体美。
動かなければ美術品だ。
杏「少し身体を浮かせられるか?」
杏寿郎は泰葉の身体からも艶やかな着物を、完全に取り払う。
灯りがついたままで、隠すものもない。
せめてもの恥じらいを手繰り、手で胸と秘部を隠してみる。
杏「む。今更隠されてもな…。それとも、俺を煽ってくれているのか?」
「あ、煽ってなんか…。」
杏「隠されると、余計に見たくなる。それが愛する人ならば、この手を少し強引に退かしてでも…。」
杏寿郎は泰葉の手を取り、ぐっと身体から引き離す。
いつもは暗がりでの情事がほとんどだったので、こうしてまじまじと見るのは新鮮だ。
杏「…綺麗だな…」
ほう…とため息を漏らしながら感心する。
「杏寿郎さんだって…。」
「ねぇ、そんなに見てちゃ…恥ずかしい。」
杏(ずっと見ていたいと…言ったら君は怒るだろうな。)
両手を伸ばしてくる泰葉に吸い込まれる様に、また杏寿郎の身体は泰葉を組み敷く。
もう、互いのどこが触れ合っても直に届く体温。
それを感じる度に、蜜が、昂りが早く欲しいと強請っていた。