第59章 あなたは誰?
杏「いや、実に美味かった!突然なのに店に入れてもらい申し訳ない!」
「本当に美味しかったです。こんな豪華な食事を食べられるなんて!」
『ははは、こりゃ気持ちのいいご夫婦だね。』
夫婦…という言葉に泰葉はポンっと赤面する。
そんな様子に店主がクスリと笑った。
『いや!実に可愛らしいじゃないか!今日は逢瀬だったのかい?』
杏「はい。婚礼を済ませる前に、なかなか機会が持てなかったので、今日初めての逢瀬なんです。」
杏寿郎の言葉にほぅ…と頷く店主。
そして、泰葉をじっと見つめる。
『じゃぁ、ちょっと楽しいことをしないとな!!』
店主の閃きに首を傾げる杏寿郎と泰葉。
すると、店主は襖を開け案内してくれた女性を呼びつけた。
『この可愛らしい女性にアレを施しておくれ。大丈夫、この2人は夫婦になる仲だ。刺激があった方がいいだろう。』
『分かりました。…でも、ちゃんと説明された方が…』
『なぁに、悪いことするんじゃないんだから。この娘(こ)を少し色っぽくするだけさ。』
店主がノリノリで促すものだから、女性は少し呆れた顔をする。
そして店主は杏寿郎にニコリと笑う。
『彼女が更に魅力的になるなら、見てみたいだろ?』
杏「泰葉さんが、嫌がる事でなければ見てみたいな!何が起きるのだろうか!」
ノリノリの男たちに、はぁ、と息を吐く女性。
『お嬢さんは、よろしいですか?』
少しウキウキした杏寿郎の表情を見れば、泰葉に断る理由がない。
「何が起きるのか分からないですが…、お願いします。」
そう言った。
…いや、そう言うしかなかった。
『大丈夫、私が付きますからね。』
そうして、些か疑問と不安が付き纏うが、泰葉は女性に連れられて、別室へと向かった。