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太陽の瞳 【鬼滅の刃】

第59章 あなたは誰?



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そんな噂話が立っているとは露知らず。

杏寿郎と泰葉も夕飯に向けて歩いていた。



杏「今晩は何か食べたいものはあるか?」
「逢瀬だから天ぷらとか、寿司とか…そう言ったものが良いだろうか。」

「んー…そうね。少し冷えてきたから温かいうどんかお蕎麦がいいかしら。」

杏「蕎麦…」



杏寿郎の頭には高木屋が浮かぶ。
店主とも一度は伺うと言っていたし、味はまだ分からないが行ってみるのもいいかもしれない。


…いや。


と杏寿郎は思い止まる。
あの店主は自分の店には2階があると言っていた。
この逢瀬の流れで、2階のある蕎麦屋に連れて行ったらそれが目的とも取られないだろうか…。

純粋な気持ちで逢瀬を楽しんでいたのに…。


でも、泰葉は蕎麦が食べたいと言っている…。
だから、このまま高木屋に行っても別にそこまで思われないだろう。

なんせ、彼女が言ったのだから!




杏寿郎の中での自問自答に決着が付き、ニコッと笑い泰葉に提案をする。



杏「今日、声をかけてきた男性を覚えているか?」

「え、うん。内緒話をしていた?」

杏「あぁ。あの方は高木屋という蕎麦屋を営んでいるそうだ。行った事がないので味がわからんが、行ってみるか?」

「そうだったの。えぇ、じゃぁお邪魔してみましょう。」


道行く人に高木屋はどこかと尋ね、教えてもらった通りに向かうと、確かにそこはあった。



杏「ここか!なかなかに立派な佇まいだな!」

「私、こんなに立派なところじゃなくても…」


そう泰葉が言うのも、そこは蕎麦屋とは思えないような建物だったからだ。蕎麦屋というより、日本料亭。


綺麗な塀に囲われて細めの竹林が綺麗に整列している。
門を潜れば日本庭園もあり、小さな池には鹿威しが、カコンと音を立てていた。

確かに二階建てではあるが、所謂蕎麦屋の2階とは到底思えなかった。



カラカラと引き戸を開けると、そこには三つ指をついて綺麗な所作で頭を下げる女性がいた。

顔を上げると、美しい顔をにこりとさせる。




『いらっしゃいませ。ここは一見さんはお断りしておりますが、どなたかのご紹介で?』





———この静かな空間が、騒々しくなるなど誰も思わずにいる。

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