第59章 あなたは誰?
槇「欲しい本は見つかったか?」
千「はいっ!父上も見つかりましたか?」
槇「あぁ。久しぶりに本を買った。これからは秋の夜長というな。」
千「そうですね。眠るまでの読書の時間が楽しみです。」
本屋から出ると顔を見合わせ収穫を喜び合う。
にこにこと笑う仲睦まじい親子。
すると、急にピン…と槇寿郎の顔が険しくなる。
槇「千!こちらの道から行くぞ!」
千「えっ⁉︎わっ!!」
急に腕をぐんっと引かれ、足がもつれそうになりながら横道に入る。
わざわざ、大通りからこの人気のない道に入る理由とは…。
千「ま、まさか…。」
槇「あぁ。間違いない。」
槇「杏寿郎だ。」
千「兄上ですか。」
2人は顔見合わせて、汗を拭う仕草をする。
(汗はかいていないが。)
間違っても家族の者が、もう少しで嫁となる女性であっても、逢瀬をしているところに出会したくはない。
千「流石です。父上!」
槇「まぁな。危なかった。」
きっと会えば、杏寿郎は気にもせず自分たちに声をかけるだろう。
だが、そんな性格だからこそ、出会したくない。
泰葉がかわいそうだ。
槇寿郎と千寿郎は横道を抜け、少し大回りだが別の道を行くことにした。
すると、その道で遠くから2人の後ろ姿を見ている者が1人。
『あれ…あの髪…。もしかして。』