第7章 満月
パン、パンッと竹刀同士がぶつかる音がする。
入り口の戸をそっと開けて、中を覗く。
杏寿郎は、真剣な表情で竹刀を打ち込んでいく。
そして、その相手は槇寿郎だった。
槇寿郎は、杏寿郎の朝の日課を把握していた。
息子と向き合うと決めたので、鍛錬にも付き合いたいと考えていたのだ。
しかし、長年のブランクがある。
しばらくは激しく打ち合っていたが、
パシンッ
槇寿郎の竹刀が弾かれて、落ちてしまった。
槇「流石に身体がいうことを聞かんな。
こんな様では不甲斐ない!俺も鍛え直さなければな。」
眉を下げて、体力の衰えを実感する槇寿郎。
杏「たしかに、持久力は衰えているのだろうと思いますが、剣裁きはやはりお見事でした!
まだまだ学ぶところが多くあります!」
杏寿郎はとても嬉しそうだ。
千「兄上…父上と…。
良かったです…僕も、いつか稽古をつけてもらいたいです。」
「…うん。今度お願いしてみたら?」
千寿郎は頷き、2人はまた台所へと戻っていった。
杏寿郎達が戻るまで、常備菜を作ることにした。
常備菜があれば、千寿郎も少しの間は楽になるだろう。
大根の浅漬け、焼き長ネギの酢漬け…
大量の、さつまいもは大学芋と、人参と一緒にきんぴらにした。
サクサクと作っていく泰葉に見惚れる千寿郎。
千「泰葉さんはお料理がお得意なんですね。」
感心しながら泰葉が作るものを見てメモを取る。
「一応、嫁入り修行として、一通りのことは叩き込まれたのよ。
料理はあとは自分で食べたいな…とか、この組み合わせなら美味しいな、とか試した結果ね。」
ま、嫁入り修行しても、こんな状態だけどね〜と笑う。
千「泰葉さんがお嫁さんに来たら、さぞ幸せでしょうね!」
キラキラとした瞳で言う千寿郎。
「え!そんな可愛い事を言ってくれるの?
私が15程若かったら千寿郎くんに嫁ぎたかったわ!」
泰葉は千寿郎に抱きつく。
千寿郎は顔を赤くしながらも、これはただの戯れだと分かり、キャッキャっとはしゃいでいた。
ぱさり…