第7章 満月
ーーーーーーーー
翌日 5時半
泰葉は目を覚ました。
いつもと違う天井、匂い…
それらが自宅ではない事を実感させた。
「はっ!そうだ、朝ごはん!!」
煉獄家の、朝が早いか遅いかは分からないが、用意をしていて間違いはないだろう。
そう思って泰葉は身なりを整えた。
台所へ行こうと襖を開けると、ちょうど千寿郎と鉢合わせた。
「わ!お、おはよう、千寿郎くん。
朝早いのね!」
千「泰葉さん⁉︎
おはようございます。ちゃんと眠れましたか⁉︎」
千寿郎は、客人の早い目覚めに驚いている。
泰葉も、病み上がりの千寿郎が心配だった。
「千寿郎くんも大丈夫なの?私がいるうちは、出来るだけゆっくりしてて!」
お互いに気遣い合っていたが、埒があかないので、
2人で朝食の準備をする事にした。
「煉獄家の朝は早いの?」
米を炊く千寿郎くんに聞いてみた。
千「はい、兄上は毎日5時半に目覚めて、6時から朝の鍛錬を始めます。
父上は今まで何時に起きていたのか、分からないのですが…」
「そっか、じゃぁもし起きてなかったら、起こしてあげましょうね。父親を起こすのも、息子の特権よ!」
泰葉が茶目っ気を含ませて笑うと、千寿郎は頬を赤くしながら頷いた。
準備が整ったところで6時半。
あとは杏寿郎達が体を清めに井戸に来るそうなので、それを合図に卵焼きを焼いて完成だ。
…しかし、井戸に来ない。
千「…?おかしいですね。」
「集中しているのかもね。先に槇寿郎さんを起こしにいきましょう?」
2人は槇寿郎の部屋へと行く。
泰葉は部屋の外で待つ事にした。
襖の前では千寿郎が緊張している。
昨日、蟠りが解けたが、その前までは怯えて過ごしていたのだから、無理もない。
千寿郎は大きく息を吸って
「父上!おはようございます!!」
そう言って、勢いよく襖を開けた。
しかし
「い、いない…」
2人は?が浮かぶ。
スパーンッ
竹刀のぶつかる音がした。
千「も、もしかして!」
千寿郎は廊下を走り出す。
泰葉も、それを追っていく。
お屋敷の端までいくと、道場の入り口があった。
(ど、どんだけ広いのよ⁉︎)
泰葉は驚いたが、千寿郎は道場にそっと入っていく。