第58章 逢瀬
悩みに悩み。
漸く注文が決まった泰葉と杏寿郎はウェイトレスを呼び、注文をする。
杏「アイスクリンと、クリームソーダ、パンケーキを頼む!」
『は、はいっ。』
ウェイトレスが驚いた顔をしながら聞いている。
泰葉は悩んだ末に決めたのはクリームソーダ。
並んでいたカップルの話が頭から離れず、しゅわしゅわへの好奇心が勝った。
それにソーダ水の上にアイスクリンが乗っているのなら一石二鳥である。
杏寿郎は危うく全てのメニューを頼みそうになったが、その後に夕飯も控えている。
きっと食べることはできるが、流石に今はやめておくことにした。
またお昼時に泰葉と来よう。
次なる逢瀬の口実だ。
それなのに、なぜウェイトレスが驚いていたのかというと。
泰葉と杏寿郎の攻防があったからだ。
手を握りながらメニューを見ていたまでは良かった。
杏寿郎が注文のため「すみません!!!!」と店中に響き渡る声で呼びつけるので、一斉に注目が集まってしまった。
泰葉は咄嗟に手を握り合っているのが恥ずかしくなり、手を引っ込めようとした時、杏寿郎がそれを阻止する。
ぎゅっと握ったまま放してくれないのだ。
「杏寿郎さん、店員さんが来ますから…!」
杏「ここでは普通の事だ。そんなに恥ずかしがることじゃない。」
「いや、でも!」
そうしているうちに、ウェイトレスが訪れ、必死に手を解こうとする女と、それをすごい力で阻止する男の図が出来上がっていたのだ。
『ご、ご注文は以上でよろしい…でしょうか?』
杏「うむ!よろしく頼む!!」
「お…お願い…します!」
余裕の表情の杏寿郎。
それに対してパーラーという、おしゃれなところに来たと思えないほど必死な顔の泰葉。
2人の手からはグググ…ギギギ…と謎の音がしていた。
『はっ、はい!』