第58章 逢瀬
この空気を感じ取っていたのは、どうやら俺だけか?
泰葉さんは、先程俺と話していた女性について聞いている。
嫉妬か?と思ったが、表情や声色の様子だとそうではないようだ。
全ての事情を話せば、あまり納得はしていない感じがする…
しかし、それよりも泰葉さんに口付けたいのだが!
また俺は泰葉さんの頬を撫でて、口付けがしたいという合図を送る。
再び甘い空気になり…今度こそ…
「でも、喜んで帰っていきましたよ?」
…むぅ!
なかなかこの空気に流されてくれないものだな…!
ここは街中、恥ずかしいのもあるだろうが、今は素で気付かれていない気がする!
…致し方ない。
少し強引ではあるが…。
泰葉さんの顎をくいっと持ち上げた時、彼女の目が揺らいだ。
こんなところで?と言いたげな瞳…。
その時
『兄さんも大変だったなぁ。』
…今度は誰だ!!