第58章 逢瀬
杏「ん?」
声をかけられた気がして、ふと視線を下げると1人の女性が立っていた。
杏「どうかされただろうか?」
一瞬、店の入り口を塞いでいたか…?と思ったが、そんなふうもない。
話しかけてきたという事は、俺に何か用があるのだろう。
『煉獄様でいらっしゃいますね?』
杏「うむ、確かに俺の名は煉獄というが。君は?」
俺はこの女性を知らない。
以前に鬼から救った…だろうか?
ある程度救った人を覚えているが、彼女はその記憶にもいなかった。
『あっ、あの、私…』
『あなたのことが好きです!!結婚を前提としたお付き合いをしてください!』
彼女はギュッと目を瞑り、俺に向かってそう言った。
杏「む?」
首を傾げる俺に、彼女はまた一方的に口を開く。
『あなたをずっとお慕いしておりました!この身も捧げる覚悟はできております!』
大きな声でそんなことをいきなり言って来るこの女性に、正気かのか?と疑問が浮かんでくる。
…一体なんなんだ?