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太陽の瞳 【鬼滅の刃】

第58章 逢瀬



間もなく13時。

泰葉は待ち合わせの場所に向かっている。
場所は特に指定されておらずなのだが、なぜそこに向かえるかというと、要が案内してくれていたのだ。


泰葉が上を向くと、こっちだと導いてくれる。
そして何より、男が寄り付こうとしたら突いて追い払ってくれる。
要が案内役を任せられたのは、そのためだった。


3人ほどの男を突いて追い払ったところで、会いたかった人影を見つける。


金色に毛先に映える緋色の髪。
後ろ髪が短くなった彼はそれでも美丈夫だ。

…心なしか、髪が少しだけ伸びただろうか。


一晩会わなかっただけで、どうしてこんなに待ち侘びた気持ちになるのだろうか。
自然と口元が緩んでくる。



「杏寿郎さ…!!」



と、呼びかけてぴたりと止まる。





泰葉の視線の先には杏寿郎の着物の袖を引く女性の姿。
泰葉よりも若いだろうか。

それに中々の美人に見える。


会話さえ聞こえないが、何かを話している2人。
そして、杏寿郎が何かを女性に言うと、その女性はパッと表情を明るくさせて、どこかへと去っていった。


(何を話していたのかしら…。)


昨日の信明の話といい…。
泰葉の胸中には不安が付き纏う。




今、杏寿郎の元に行っても良いものか…。


泰葉が迷っていると、先に降り立ったのは要。
杏寿郎の肩にバサリと止まった。


要が来たということは…と、杏寿郎がこちらを見る。


杏「泰葉さん!!」


ぶんぶんと手を振る姿に、安堵感を覚えた泰葉。


(そう、そうよ。杏寿郎さんがそんなことするはずないわ…。)


そう心に言い聞かせて、泰葉は杏寿郎に駆け寄る。

「杏寿郎さん、お待たせし…わっ!」


泰葉が言い終わるより先に、視界が真っ暗になる。
驚いて息を吸うと、杏寿郎の香りで鼻腔が満たされた。

そしてその事により、自分が抱きしめられている事を悟る。


「んー!んん!!」


ここは街中。
いくら同じような恋仲の人がいるとしても恥ずかしい。


泰葉は杏寿郎に放してもらうよう訴える。



杏「もう少し、後数秒で構わない。」



杏寿郎の温もりに、自分の先程の考えなど忘れよう…。
そう思った。


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