第58章 逢瀬
しばらくしてまた要がやってきて、杏寿郎の返事をもらう。
【 承知した。
明日、泰葉さんに会えることを楽しみにしている。
冷えてきたから、暖かくして眠るように。
お2人にもよろしく伝えてくれ。
愛しい泰葉。
おやすみ、良い夢を。
杏寿郎 】
【 初めての文のやりとりに胸が高鳴ってしまったわ。
私も楽しみにしています。
杏寿郎さんも暖かくね。
風邪をひいて延期なんて嫌よ。
良い夢を。
泰葉 】
どうやら杏寿郎は恋人への文にも、存分に愛情を込めるようだ。
本当は
【私も愛しく思っています。】
そう書きたかったが、どうしても照れが勝ってしまい、書けずじまいに終わる。
(こんなんじゃダメね…。ちゃんと気持ちを表現できるようになりたいわ。)
そう一つため息をついて、要の足に手紙を括る。
「夜遅くにごめんね。要もゆっくり休んでね。」
頭のてっぺんを人差し指で掻くように撫でると、もっとしてくれと強請る。
しばらくそうしてやり、乱れた羽根を撫でて整え、空へと放した。
要が暗闇に消えていったのを見届け、窓を閉めようとすると、咲子がニコニコ見ていた。
咲「さ、お風呂にどうぞ。」
「ありがとう」
泰葉は湯浴みを済ませて眠る用意をする。
咲「別の部屋でも良いのよ?私たちは嬉しいけれど。」
咲子がそう話す理由。
泰葉は咲子と信明と共に眠ろうとしている。
確かに煉獄家へと引っ越す際、最後にと一緒には寝ていたが、咲子達からしたら若い娘。
咲子はともかく、信明とも寝て良いのか?
しかも、一応嫁入り前だし…。
「正式に結婚したら、それこそもうこんなふうに眠れないじゃない?」
「だから…お願い。」
そんな風に可愛くお願いされて、誰が断れよう…。
咲「もうっ!可愛いんだからっ!!」
3人で並んで布団に入る。
信「いやー…やっぱりなんだか照れちゃうなぁ。
杏寿郎くんには内緒にしておかないと。」
照れ隠しにはははと笑う信明。
でも、とても嬉しいのがわかる。
咲子も娘がいるようで嬉しい。
咲「おやすみ、泰葉ちゃん。」