第58章 逢瀬
「水羊羹、美味しい!!」
夕食後、3人は水羊羹を堪能している。
時期は終わってしまったので、少し寒くも感じつつあるが美味しいものは美味しい。
つるんとした喉越し、さっぱりした甘さ。
こんな美味しいものにありつけて、運が良かったと思う。
咲子と信明は泰葉との時間を大切にしてくれた。
2人の祝言の時の話や、ここに気をつけたほうが良いなど、有益な話をたくさん話してくれて、泊まりに来て本当に良かったと思う。
そんな話をしていると、窓からコツコツと音がした。
泰葉が窓に目をやると、要が近くの木に止まっている。
「あ、要だわ!」
泰葉は窓を開けて左腕を出すと、要がバサバサっと飛んできた。
足に手紙が括られていたので、泰葉がそれを解く。
要の頭を撫でてやると、うっとりとした表情。
本当に可愛い鴉だ。
「ありがとう、要。今お返事を書くから待っててね?」
コクッと頷くとまた木の枝に戻っていった。
咲「この鴉さんは言葉が分かるのね。鴉は賢いと聞くけれど、ここまでとは思わなかったわ。」
咲子と信明は窓辺に立ち、枝に止まった要を見ている。
「えぇ。本当に賢い子なのよ。人にも懐くし、可愛いわ。」
泰葉はそう言いながら、手紙を開いた。
【 泰葉さんへ
楽しく過ごせているか?
君に出会うまでは
男3人で過ごすことが当たり前だったのに
寂しく感じる。
今日は1人寂しく布団に入るのかと思うと気が乗らないな。
明日は何時に待ち合わせよう。
ゆっくりしたければそれで構わない。
明日の夕飯はそれぞれ外食にしようと話に出ているぞ。
杏寿郎 】
泰葉はクスッと笑い、返事をしたためる。
【 杏寿郎さんへ
お手紙をどうもありがとう。
こちらではとても良くしてもらっているわ。
たまには3人で眠ってみてはどうかしら?
きっと暖かく眠れるはずよ。
でも、やっぱり早く会いたいと思うのは
杏寿郎さんといるのが心地いいからなのね。
ゆっくりさせてもらえるのなら、
お昼過ぎの13時ではどうかしら。
泰葉 】
泰葉は手紙を要に頼み、届けてもらった。