第58章 逢瀬
実「へぇ…。それでそれをねぇ。」
実弥は菓子楊枝でおはぎを一口ほどに切り、口へと運ぶ。
玄「煉獄さん、ロマンチストなんすね。」
杏「む?不死川弟は難しい言葉を知ってるんだな!」
玄弥の言葉に片眉を上げて笑う。
玄弥は、そろそろ名前を覚えてくださいと困った顔をした。
しばらく鮭大根を頬張っていた義勇がようやく飲み込み、口を開いた。
相変わらず、食べながらは話せないらしい。
義「それは…いつ渡すんだ?」
杏「明日だ!明日、泰葉さんと逢瀬をする約束だ!俺たちは恋仲になってもまだ逢瀬をしたことがなくてな!」
実「わぁった、だから静かに喋れェ。」
店中に響く声で明日は逢瀬だ!など聞かされる身にもなって欲しい。
ただでさえ「うまい!」で注目を浴びているのに、さらに周りがこちらを見ている。
実「オイ煉獄、婚礼の前に俺にも逢瀬をさせろォ。」
義「では、次に俺も…」
ジトっと杏寿郎を見ながら実弥と義勇がそんなことを言う。
玄弥は「兄貴、それは…」と実弥を宥める。
杏「友の頼みでもそれは聞けないな!!!」
と、カッと目を見開いて今日一の声で一蹴した。