第58章 逢瀬
確かに何も悩みがないかと言われれば、一つや二つは思い当たる。
しかし、杏寿郎のいないところでそんな話をしてもいいものか…。
うーんと悩んでいる泰葉に咲子は笑みを零す。
咲「変な風に聞こえたらごめんなさいね。私の知る限り、男性とのお付き合いは杏寿郎くんが初めてなんじゃないかな、と思ってね。結婚するとなると、やっぱり閨事ってつきまとうじゃない?」
「も、もちろん変な興味で言ってるんじゃないって分かってるわ。」
咲「杏寿郎くんは、性格も優しいからきっと泰葉ちゃんを労ってくれてるとは思うけれど。」
(なかなかこんな話もできないか…)
泰葉はそう思い、杏寿郎には少々申し訳ないが相談させてもらうことにした。
「あ、あのね。その…杏寿郎さんって体力がすごいのよ。」
咲「それは見れば誰でもわかるわ。あれだけ元気な方だもの。」
クスクスと笑う咲子。しかし、泰葉がその事で切り出したということは…。
咲「その…体力が問題なのね?」
泰葉はコクっと頷く。
今はまだ残る治癒能力で体も痛むことはない。
だが、体力は別の話。
1回で終わる…ということは、まぁ、滅多にない。
よっぽど泰葉が気をやって眠ってしまったりすれば別だが。
杏寿郎の体力についていこうともなれば、軽く登山でもしたかのような疲労がやってくるのだ。
「もちろん、最中は気遣ってくれるし、嫌じゃないし、その時はいいんだけどねっ。」
咲「うーん…。私は一般的な体力の人としか経験がないからなぁ。
せっかくお話ししてくれたのに、ごめんなさいね。」
「う、ううん!むしろこんな話をごめんなさい。」
咲子はとりあえず辛いときは辛いと言う、あとは泰葉が体力をつけるしかないのでは。と、助言?をした。
咲「ちなみに、何回くらい?」
これは、ただ単に興味の質問。
泰葉は少し戸惑いつつ、こそっと杏寿郎の平均的な回数を耳打ちした。
それを聞いた咲子の顔が、みるみるうちに青ざめていったのは言うまでもない。