第58章 逢瀬
「そうね、確かに…杏寿郎さんは情熱的な方ね。」
泰葉がぽつりと呟くと、咲子は待ってました!という表情を向ける。
咲「あんまり泰葉ちゃんから、そういう話を聞いたことがなかったわね。大丈夫、私たち言う相手もいないから。なんでも聞かせてちょうだい。」
ニコニコと頬杖をついて食いつく咲子。
信明は、やれやれと少し困った笑みを浮かべながら、立ち上がった。
信「少し散歩をしてくるよ。女性同士の方がこの手の話は花が咲くだろうから。」
そう言って、信明は部屋を出ていく。
なんだか気を遣わせたか?と思ったが、正直信明にも話すのは恥ずかしかった。
咲「うちの旦那、優しいでしょ?」
「えぇ。羨ましい限りだわ。」
ふふっと笑い合って、咲子がお茶を注ぎ直してくれた。
咲「で?杏寿郎くんは、ちゃんと言葉にしてくれるの?」
咲子の聴取が始まる。
泰葉はいざ話そうとなると、少し恥ずかしかった。
しかし、こんなに堂々と杏寿郎への想いを他人に話す機会もないだろうと腹を括った。
「うん、杏寿郎さんは言葉にして想いを告げてくださるわ。だから歳が5つも離れてても、安心して一緒になろうと思えたの。」
咲「うん、そうなのね。言葉にするって大事なことよ。主人も言ってたように、結婚しても分身したわけじゃないから、思考は分からない。何を考えてるかは、これからもちゃんと話していってね。」
「うん。」
それからは泰葉の実家での手合わせの事や、煉獄家での暮らしなどを話した。
咲子は泰葉が幸せそうなのを感じ、とても嬉しかった。
咲「幸せそうでよかった。そういえば、閨事のことは大丈夫?何か悩みがあったら聞くわよ?」
「ねっねね、閨事⁉︎」
泰葉はまさか咲子にそんな事まで振られると思わず、動揺が隠しきれない。
もちろん、咲子は下世話な気持ちで聞いてるのではなく、純粋に悩みがないかを聞いている。