第58章 逢瀬
杏寿郎は泰葉を気遣い、縁側に座らせる。
冷やしてはいけないと、杏寿郎が近くにかけてあった膝掛けをかけてくれる。
「よくこうした方がいいって知ってるのね?」
杏「ん?あぁ、母がな…月のものでよく腹を痛めていたんだ。その時、父が温めてやろうと色々としていたのを見ていたから…。」
「…そう。そうだったんだ。」
槇寿郎が瑠火をどれだけ愛していたのか、とてもよく分かる。
そして、そんな父と母を見ていた杏寿郎も、だからこんなに愛情深いのだ。
「杏寿郎さん、私は幸せ者ね。
こんなに優しい煉獄家にくることができたのだから。」
杏「む。どうした?…しかし、幸せだと言ってくれるなら、これほど嬉しいことはないな。」
杏寿郎が泰葉の肩を抱くと、泰葉はこてんと杏寿郎の肩に寄りかかった。
パサッ…
杏寿郎の肩に降り立つ鴉。
用事を済ませてくれたようで、要が戻ってきた。
足には手紙が括られている。
「おかえり、要。ありがとうね。」
「まぁ、もう返事をくれたの?」
泰葉が驚きながら、その手紙を広げると、1週間後に会いましょうと書いてあった。
杏「うむ。行ってくるといい!」
杏寿郎も嬉しそうに頷き、1週間後泰葉は咲子の家に一泊する約束をした。
泰葉が嬉しそうにしていると、要が杏寿郎の肩を降りて、泰葉の膝に乗ってきた。
もぞもぞと腹にピタッと寄り添うように落ち着く要。
「あら?要も温めてくれるの?」
杏「むぅ、要。君は泰葉さんが好きなのか?」
杏寿郎がずるいぞ、と視線を向ければ、心なしか得意気な表情を返された…気がする。
「要は杏寿郎さんの相棒だから、こんなに優しいのね。」
今度は杏寿郎が得意気な顔をすると、要は悔しそうに泰葉にスリスリとする。
杏「今日は温かくして眠ろう。
俺が温めてあげるから。」.
杏寿郎は布団を敷いて泰葉を誘う。
泰葉は甘えることとして、布団入る。
すると、要も泰葉の脇に入り込んでくる。
「ふふ、みんなありがとう」
杏寿郎の温もり、要の温もり…
とても温かくすぐに眠りに落ちていった。