第57章 大輪菊
それから周りを綺麗にし、墓を後にする。
槇寿郎が昼は何かを買って帰ろうと言ったので、惣菜屋さんに回って弁当を買った。
沢山のお弁当が並ぶ中泰葉達は、おすすめのきのこご飯のお弁当にした。
もちろん、杏寿郎はそれで済むはずがなく、追加で6個の弁当を買っていたが。
『ありがとうございましたー!』
一気にこんなに買って行ってくれる泰葉達に、店員が深々と頭を下げた。
周りの客も杏寿郎の手にある風呂敷を二度見する。
「美味しそうなお弁当ばかりでしたね!」
杏「あぁ!早く帰って食べるとしよう!」
杏寿郎は嬉しそうに微笑んだ。
…ふと、泰葉は気づく。
「杏寿郎さん、今日はお弁当の数…少なくありませんか?」
いつもなら最低でも10個は食べるはずなのに、計7個。
鬼殺をしなくなったからか?
いや、でも毎日鍛錬は行っていて食事量は変わっていないし…。
杏「これ以上買うと、風呂敷が増えてしまうだろう?」
杏寿郎の言葉に「?」が浮かぶ。
風呂敷が増えたところで、杏寿郎にとっては問題ないように思うが…。
そう思っていると泰葉の左手がふわりと暖かくなる。
「!! 杏寿郎さん、そんなみんなの前で…!」
杏寿郎が手を握ってきたのに驚いて小声で訴えると、視線だけチラリと泰葉に向ける。
杏「大丈夫だ、気づかれてないさ。
それに、元よりこのために弁当の数も我慢したんだが。」
自分の食欲を我慢してまで手を繋ぎたかったと言われれば、黙るしかあるまい。
だが、杏寿郎は気付かれていないと言っていたが、槇寿郎と千寿郎はチラリとこちらを見て、見ぬふりをしているので泰葉は顔を赤くした。
「気づいてないって思ってるの、杏寿郎さんだけだからねっ…!」
少し睨みながらそう言うも、正直泰葉も嬉かったし、槇寿郎や千寿郎の前でそうしてもらうと言うことは、家族として見られている気がした。