第57章 大輪菊
杏「さぁ、ここだ!」
町外れの立派な墓地。
ここに瑠火は眠っている。
鬼殺隊士は殆どが鬼殺隊本拠地近くにある墓地に眠っているが、代々炎柱を担ってきた煉獄家は、鬼殺隊の中では特殊な家系。
身寄りがないわけではないので、煉獄家の墓を他の地に構えている。
この墓地自体も大層立派であるが、その中でも敷地も広く立派な墓石が見えてきた。
【煉獄家 代々之墓】
そう彫られた墓石には、歴代の炎柱、その妻の名前と年齢が記されていた。
そのなかに
【煉獄 瑠火】
年齢は誰よりも若い30前半の数字…。
だが、約1年前、杏寿郎はこれよりも若い数字を掘ることになろうとしていたのだ。
千「母上、来ましたよ。」
千寿郎が墓石に話しかける。
手に持った桶に入った水を柄杓に掬い、下の方にさっとかけた。
槇「久しく来れずにすまなかったな。
ほら、今日は嬉しい知らせを沢山持ってきたぞ。」
槇寿郎は古い花を取り、新聞紙に包む。
花差しの水を捨て、千寿郎に新しい水を注いでもらった。
杏「…さ、泰葉さん、花を生けてやってくれ。」
「はい。」
泰葉は抱えてきた花を墓石の脇に下ろし、包みを開く。
そして綺麗に切り揃えた花を2つに分けて、それぞれ花差しに生けた。
赤い大輪菊が鮮やかに映える。
「こちらでは初めましてですね。西ノ宮泰葉と申します。煉獄家の皆様に大変良くしていただいております。」
泰葉は、自己紹介をして杏寿郎の後ろに下がった。
杏「母上。今、この世は鬼に脅かされる事は無くなりました。
今まで、代々戦ってきた方々や、仲間たちのお陰で鬼舞辻無惨を倒すことができました!
本当はこの喜びを母上とも、分かち合うことができたらと思いますが、きっと喜んでくださっていると信じています!」
溌剌と報告をする杏寿郎。
これを直接、瑠火に話すことができたなら…と思う。
少し切ない気持ちに浸っていると、杏寿郎がそっと泰葉の手を握り、自分の側へと引き込んだ。
杏「母上!この方が泰葉さんです!
俺の命を救ってくださった運命の人です!」
泰葉は、墓中に響き渡るような声で話す杏寿郎に目を丸くする。