第56章 残暑と秋
「ところで雛鶴さん達は?」
不思議に思って聞いてみると、天元は嫁がこっちにきたら誰が打ち上げるんだと返す。
つまり、花火を創り出し、打ち上げまでやってくれる…ということだ。
天「虹丸!よろしく頼むぜ!」
天元がひょいと何かを投げる。
カチッと虹丸がそれを咥え、更に高く上がった。
そして、角度を調整すると、キラッキラッと光る。
3度光ったと思ったら、何処からか
ドンッと音がして、光の筋が空へと上がる。
ドォンッ
…パラパラパラ…
大きさは3号玉(開いた花は直径約60m)程か…。
少し小ぶりではあるが、見事な花火だ。
「わあぁ!!!」
花火の光が皆の見惚れる表情を照らし出す。
千「すごいですね!!まさか今年花火が見れるなんて思いもしませんでした!!」
千寿郎は興奮気味にはしゃいでいる。
無「ほんとだね。とても綺麗。」
無一郎と千寿郎は、仲良くなった様子。
蜜「…綺麗…」
蜜璃もうっとりと眺めていると、小芭内がそっと蜜璃の手を握る。
蜜「!!!」
小「その…花火はもちろん綺麗だが…照らされた甘露寺も…き、綺麗だ。」
蜜「…!!!や、やだ!伊黒さんったら…は、恥ずかしいわっっ!!」
きっと、明るければ2人の顔は真っ赤なのだろうなと思う。
皆2人の様子に気づかないふりをしてやり、幸せを切に願う。
すると、杏寿郎も泰葉の肩を抱き、少し屈んで耳打ちする。
杏「俺もあのくらい気の利いた言葉を言いたいところだったが、先を越されてしまったな。」
その言葉にふふっと笑う泰葉。
「杏寿郎さんからはいつも言ってもらっているから大丈夫よ。」
ドォンッ…
…パラパラパラ…
ドォンッ
…パラパラパラ…
花火は3発。
終わると、拍手が起こった。
どれも見事な花火だった。きっと、1人一つずつ創ってくれたのだろう。
天「多分、最初が須磨、次がまきを。最後が雛鶴だろうな。」