第56章 残暑と秋
日も暮れ始め、辺りが薄暗くなってきたころ、泰葉達は早めの夕飯を済ませ、また裏山に向かっていた。
杏「暗くなってきたから足元に気をつけるんだぞ。なんなら背負うが…」
「大丈夫ですよ。しのぶさんも蜜璃ちゃんも歩いてるのに、私だけ楽できないわ。」
し「私達は大丈夫。今まではこれよりも暗い場所に行っていたのだから。」
蜜「そうよ、泰葉ちゃんが怪我をする前に背負ってもらった方がいいわ。」
蜜璃の隣で小芭内も「全くだ。」と頷いている。
しかし、こんなくらいで甘やかされていたら、何もできなくなりそうだ。
「心配ありがとう。でも、だいじょ…」
と、言いかけると、急に身体がふわりと浮いた。
驚いていると、暗がりでも分かる杏寿郎の綺麗な瞳がすぐ近くで光る。
杏「たまにはすぐに頷いて欲しいものだな。泰葉さんが俺に甘えてもいいと言うように、俺も甘えて欲しいのだが。」
身体が浮いたのは、杏寿郎が横抱きにしていたから。
こうなってしまえば、何も言い返すことができない。
恥ずかしくなり、頬を膨らませて少しいじけたようにしがみつくと、
蜜「こうしてもらった方がいいと言ったけれど、実際にされると刺激が強いわね…!!!」
と、興奮していた。
天「ま、見るにはこの辺がいいだろう!」
天元が立ち止まり、先程の手合わせの時より少し登ったところで見ようと声をかける。
泰葉は3人の嫁達がくると思っていたのだが、一向に姿を見せる気配がない。
天「よぉし、上げるぞ!!」
すると、天元はピンっと何かを弾きながら上へ飛ばした。
全員が上を見上げると…
ドガァァァン!!
軽く爆発が起こる。
『・・・・・・・・。』
杏「…宇髄!俺はもう少し違う花火だと思っていたのだが!あれを君が花火と言うのなら、俺たちは何も言うまい!!」
杏寿郎が皆言いたいが言えないことを口にする。
天「ちっげぇわ!!!今のが花火なわけねぇだろ!!」