第56章 残暑と秋
し「冨岡さん、西瓜の何処にそんな口の周りが賑やかになる要素がありますか?」
義「……。」
しのぶの問いかけに無言で咀嚼する義勇。
確かに西瓜を食べているとは思えない様な口の周りだ。
呆れた顔をしながら、しのぶが濡れ布巾を取りに来た。
「しのぶさん、これを渡してあげて。」
それに気づいた泰葉が綺麗な濡れ布巾を渡す。
し「ありがとう。西瓜でああなるのかしら?」
首を傾げながら布巾を受け取り、また義勇の元に戻っていった。
義勇はしのぶにガミガミ言われながら口を拭く。
「ねぇ?しのぶさんと冨岡さんってお似合いだと思わない?」
泰葉が、ふとそんなことを言うと、杏寿郎と実弥はふむ、と2人を見る。
杏「あの2人はずっとあんな感じだからな!!」
実「冨岡があんなんだからなァ。世話焼きなだけだと思っていたが…」
お似合い…なのか?と杏寿郎と実弥は首を傾げた。
「そうかしら…?」
お似合いだと思うのだけど…。
特にしのぶさんが冨岡さんに気があるように思える。
でも、世話焼きなだけだと言われれば…そんな気も…。
泰葉は2人の関係を見ていかなくては…!と密かに楽しみにする。
杏「…ところで、宇髄がやけに静かだな…。」
確かに、と泰葉と実弥も辺りを見回すが、天元の姿はない。
「何処にいったのかしら?西瓜は食べられたかな?」
西瓜割りの時には確かにいた。
だが、今は何処を見てもいない。厠?
無「なんか鴉と向こうで話してる。大丈夫だよ、こんなに食べてるから。」
無一郎が指差す先には沢山の西瓜の皮。
食べれたかの問題は心配なさそうだ。
杏「鴉と?なんの話だろうか。奥方達が何があったのか?」
無「さぁ?なんか、打ち上げるには…とか言ってましたよ。」
「打ち上げる?…何を?」
全員の頭に「?」が浮かぶ。
すると、噂の天元がニコニコしながら戻ってきた。
天「日が沈んだら、花火上げるぞ!」
『え⁉︎』
その発言に皆目を丸くする。
槇「ならば先程の裏山でやるといい。ただ、山火事にだけはするなよ。」
天「さすが親父さん!大丈夫だ。木々よりもだいぶ高いところで弾ける!火事にはしねぇよ!」