第7章 満月
その後は、他愛のない話をした。
次第に、駅での話になった。
売店で2人が出会った時のこと。
「あの時は学生さんかと思っていました。」
杏「む!学生とは…そんなに幼く見えていたのか!」
「いえ、服装が学生の詰襟かと思ったので…
そして、杏寿郎さんは炭治郎くん達と一緒に?」
杏「ああ、彼らと任務が一緒だったのでな!」
炭治郎…と聞いた時に、槇寿郎の眉がピクリと動いた。
泰葉はどうしたのかと思ったが、触れないことにした。
「では、あのお弁当はやっぱりみんなで食べたんですね!」
杏「いや、あれは全て俺の分だったが?」
「へ?」
この話を聞いていて、驚いているのは私だけのようだ。
「確か、11個…買いませんでした?」
杏「あぁ!11個の弁当を食べた!!!!」
泰葉は固まった。
千寿郎はお茶を啜った。
千「泰葉さん、驚かれると思いますが、おそらく兄はその後の任務に備えて、少し控えています。
通常ならばもっと食べていますよ。」
眉を下げて、泰葉を落ち着かせようとしているのだろうが、それは驚きを倍増させるだけであった。
でも…確かに。
明日の朝なども見越して、お粥も味噌汁も大量に作ったのだが、
杏寿郎が「うまい!」と、ほぼほぼ食べてしまった。
さつまいもの味噌汁の時には
「わっしょい!」
と叫ぶものだから、驚いた。
なんでも、さつまいもを食べた時の癖なんだとか。
でも、「うまい」と言われれば、作る側としては嬉しいものだ。
毎日作っている千寿郎や、将来の杏寿郎のお嫁さんは作りがいがあるだろうな…
私も…
そんな日は来るのだろうか?
ぼんやり考えていると、杏寿郎が話しかけてきた。
杏「そういえば、泰葉さんが退院した日、大量の土産を持って、黄色い少年達が帰ってきたな!
なんでも、泰葉さんが持たせたのだと。」
「はい。お世話になったので。
入院費なども取らないとのことだったので、お土産でしかお礼ができませんでした。」
杏「蝶屋敷の少女には分かるが、俺にまで買わなくても良かったと思うが…」
「え?」