第55章 愛の形 ❇︎
「ん…、私も…」
泰葉は身を捩らせながらも、杏寿郎の言葉に微笑んだ。
杏寿郎は、耳の後ろを舐め上げると、ちゅっと唇に一つ口付けをし、今度は右耳に移動する。
泰葉は新たなる刺激に「んふ…あっ…」と、声を上げた。
杏「右と左、どちらの方が気持ち良い?」
どちらが…というのは難しい話。
だって、どっちも気持ちが良いのだから。
「わ、わからな…んんっ」
本当のことを答えると、杏寿郎は「そうか…」と、今度は右耳の上の方をカプッと甘噛みする。
「ひゃ…ん…あっ…」
コリコリと少し動かしてやれば、泰葉の膝がすりすりと擦れ合う。
杏(耳だけでこの反応の良さ…。堪らないな。)
離れがあって本当によかった。
ここがなければ、なかなかこうして肌を合わせることは難しいだろう。
この声に釣られて他の男に見られた…など許し難い。
杏寿郎は右耳も十分に堪能し、段々と下に降りることにする。
白い首筋に下を這わせ、つー・・・と下がれば、泰葉の肌がゾワゾワと粟立つのが感じられた。
「ひぅっ…んーっ!やぁっ」
堪らず、首をすくめながら声を上げる泰葉。
どうやら本当にくすぐったかったようだ。
杏「今のは嫌だったか?」
「嫌…とかじゃなくて…、ゾワゾワしちゃう…」
答えになったような、ならないような。
しかし、拒否はしていないようだ。
杏「では、続けて良いと取る。」
そう言って、杏寿郎は先ほどよりも堂々と首筋を下から上へと舐め上げた。
「ふぅ…んっ」
キュッと目を瞑り、杏寿郎の舌の感覚に悶える泰葉。
こういう小さな動作が杏寿郎の理性を少しずつ削っていくのだ。
杏「こうして触れ合うのも久方ぶりだ。今日はじっくりと味わいたい。付き合ってくれるか…?」
杏寿郎が泰葉の頬を撫でて問いかけると、潤んだ瞳をゆっくり開き、「うん…」と頷いた。