第55章 愛の形 ❇︎
〜杏寿郎視点〜
可愛らしい赤く染まった耳に口付ける。
その度に身を捩る泰葉。
しかし、耳を心なしか差し出してくるのは無意識なのだろう。
杏(全く…煽るのが上手いな…)
許されるのならば、もうすでに苦しくなる昂りを容赦なく突き立てたい。
己の欲のまま、腰を打ちつけてやりたい。
しかし、俺ははその気持ちをグッと抑える。
今こうしているのは、自分のためだけではない。
愛を重ね合っているのだ。
なんならこの行為が必要なわけではなく、互いに気持ちを伝え合い実感できれば良いのだ。
その過程で、体を重ね合わせて愛を、体温をより感じたい…。
それだけ。
耳朶を口に含み少し吸う。
柔らかな耳朶は、何か食べているような感覚を覚える。
軽く甘噛みをすると「あっ…」と跳ねた。
杏「本当に感度がいいのだな…」
こんな姿を他の男が見ていたならば。
泰葉の性格はもちろん、
身体の良さを知った男が俺より先にいたならば…。
間違いなく手放したくなんか無いだろう。
聞こえは危ないが、俺のものだけでいて欲しい。
これが本音。
人の気持ちは移ろいでしまうもの。
泰葉の気持ちを俺に留めておくには、俺も十分に努力をする必要がある。
杏「泰葉、愛している。」
まずは想いを伝えよう。
態度でも、言葉でも。