第55章 愛の形 ❇︎
「……っ!!!」
杏寿郎の言葉と、自分の身体の反応とに泰葉は恥ずかしく両手で顔を隠す。
その様子をどうしたのか…と見ていた杏寿郎だったが、何となく悟った。
そして、ニヤリと口角を上げた。
(私、こんなんじゃなかったのに…、どうしたっていうの…)
顔を隠しながら動揺を落ち着かせる泰葉。
杏寿郎はその手をそっと退かせた。
杏「泰葉、その愛らしい顔を見せてくれ。
隠す事なく、全てを。」
「きょ、杏寿郎さん…そんな台詞…どこから覚えてくるんです?」
泰葉は少し睨む様に杏寿郎を見る。
…それは杏寿郎を喜ばせるだけだと知らずに。
杏「…俺がこんな風になったのは、全て泰葉のせいだ。
君が愛らしく美しい。優しい心をもち全てが俺好みなのがいけない。」
(いけないのはどっち…!!)
泰葉の頭にはそんな抗議が浮かんだが、それはまた杏寿郎の口付けにより掻き消された。
これからの口付けは、今から始まる愛を交わし合うことへの準備。
杏寿郎の唇は泰葉の唇から離れ、左耳へと移動する。
「んやっ、耳は…耳はダメっ…」
杏「ふむ…。」
耳を刺激されれば堪らず身を捩らせなら、杏寿郎を止める。
杏寿郎はダメと言われ、一度唇を離し泰葉の顔を見て少し考える。
これが、「もっと」のダメなのか、「やめて」のダメなのか…。
杏「…泰葉、本当に嫌なら俺を押してくれ。
嫌でなければ、『もっと』と言いなさい。その方が楽になる…。」
そう耳元で囁き、またちゅっと耳の輪郭に口付けた。
「んんっ…!!」
そう身を捩る泰葉。
さぁ…どっちかな…?
一瞬くっと杏寿郎の肩に手が添えられて、押す…ような動作を見せた。
しかし、泰葉の口から出たのは
「も…もっと…」
杏寿郎の口元は締めるのが困難になった。
こんなおねだりをされてはニヤつきが止まらない。
杏「あぁ。愛い、愛いな…。承知した。」
杏寿郎は『お望みとあらば…』と、わざとリップ音を立てながら耳の輪郭を下から上へと丁寧に口付けていく。
「んん…あっ…」