第54章 お手伝い
実「俺と冨岡は玄弥も連れて、礼回りに行こうと思ってる…。」
実弥から意外な言葉が飛び出した。
実弥と…義勇が…?
それは泰葉以外の者たちも驚いている。
天「そりゃ、結構な事だが…どんな風の吹き回しだ?」
義勇と実弥、加えて小芭内。
この3人は犬猿の仲…。
なのに内2人が一緒に礼回り…?
実「まぁなァ。冨岡とは一緒に動くとは思っても見なかったが…
こいつが辛気臭かったのもマシになったからなァ。
家族が待つ家も持ち合わせてねぇし。」
義「俺を辛気臭いと思っていたのか?心外だ。」
小「拙者、不幸者でござるみたいな顔をしていたら、誰も近寄りたく無いだろう。」
義「…!!不幸者!!」
義勇は皆がそんなふうに自分を見ていたのか…とショックを受けている。
むしろ、なぜ今まで分からなかったのか…が、謎だけれど。
し「そんなんだから皆に嫌われるんですよ。」
しのぶがトドメを刺す。
義「…胡蝶もか?胡蝶も俺が嫌いなのか?」
し「えっ…⁉︎」
今までは
「俺は嫌われていない…」
と、表情も変えずにいたのに、今の義勇は慌てたように自分への当たりに素直に反応している。
そして、しのぶに「俺のこと、嫌いか?」と答えづらい質問をする。
「冨岡様、流石に女性のしのぶさんにはその質問は答えづらいですよ。」
泰葉が義勇を落ち着かせる。
皆…そんなに俺を…と落ち込んでいる義勇に寄り添い、背中を撫でた。
すると、まさかの義勇は泰葉に頭を押しつけて擦り寄ってきた。
「と、冨岡様…!」
泰葉が驚くと、義勇はハッと青ざめた。
一方で泰葉はというと…
義勇は泰葉を姉だと思っている。
(これは…冨岡様も甘えたいのかしら…)
泰葉の妙な庇護欲が掻き立てられ、義勇の髪を優しく撫でた。
義「…!泰葉、嬉しいがもういい。」
「あ、そうですね。ごめんなさい。」
泰葉は姉気分といえど、杏寿郎の婚約者。
これは些かいけない気がする。
周りもハラハラとしていたが、義勇自ら止めに入ったことに安堵した。
杏寿郎の額には筋が立っていたから。