第53章 予想外
2人は手を握り合い一礼したところで、泰葉は杏寿郎達の元へ駆けつける。
「お二人とも!怪我はありませんか⁉︎」
慌てた顔で駆けてくる泰葉を見て、笑顔を見せる2人。
杏「あぁ!大丈夫だ!」
槇「問題ない。俺の方が体力が無かっただけだ。」
槇寿郎はまだ少し息が上がっているようだが、杏寿郎は既にいつも通り。
怪我などはなく、問題はなさそうだった。
「よかった…」
泰葉は心から安心した。
あの煉獄を受けて尚、怪我なくいれるのは奇跡というべきか、流石というべきか。
今まで離れたところにいた柱達も向かってきた。
天「おうおう!良いもん見れたぜ!こりゃすげえな!!」
辺りの禿げ上がった山肌を見れば、どれだけの威力で戦っていたかが感じられる。
実「あーぁ。煉獄が勝っちまったから予定通りになってんじゃねぇかァ。」
ガシガシと頭を掻く実弥に、杏寿郎は満足そうな表情を見せる。
杏「うむ!そう簡単に他の男に渡すわけにはいかないからな!」
「して、父上!これで俺と泰葉さんの結婚を許してもらえるでしょうか!!」
槇寿郎の方に向き直り、杏寿郎は姿勢を正し尋ねる。
泰葉も、そうだったと姿勢を正した。
千寿郎も静かに父の様子を伺う。
槇「あぁ。もちろんだ。むしろ、泰葉さんが煉獄家の嫁に来てくれることをありがたく思う。」
明るい笑顔で頷いてくれた。
その様子を見て、杏寿郎と泰葉はもちろん、千寿郎と柱達も心温まる。
蜜「よかったわぁ。万が一負けてしまったりしたらどうなっちゃうのかと思った。」
杏「負けるわけにはいかないと思ってはいたが…
もし俺が負けていたら、やはり反対されたのでしょうか?」
「まさか…」
杏寿郎はハッと槇寿郎の顔を見て、険しい表情を作る。
杏「よもや、父上…
自分が勝ったら、泰葉さんを俺たちの母上にしようと…」
その言葉にギョッとする柱達。
まさか…と槇寿郎に視線を向ける。
槇「待て…、どうしてそういった話になるんだ…。」