第53章 予想外
槇「それに元より俺は反対する気などさらさら無いぞ。
むしろ、泰葉さんが煉獄家の嫁になってくれると、そんな嬉しい話を手放すわけが無いだろう。」
何を言っているんだ、と言わんばかりの槇寿郎。
杏「では!勝とうが負けようが結婚は変わらず?」
槇「流石に俺に負けたとしたら、それは炎柱としての名が廃る。
もう一度鍛え直して、勝ってからにするが、だからといって泰葉さんに、他の男のところへ行けとはならんだろう。」
その言葉に泰葉と千寿郎はなんだ、と胸を撫で下ろす。
つまりは、初めから実弥達に可能性もなかったということ。
…まぁ、負けるとも思っていなかったし、分かってはいたがなんとなくがっかりする実弥達。
義「一瞬でも浮かれそうだった…」
無「なんだ…可能性なかったんだ…。」
実「まぁ、そうだとは思ったたけどなァ。」
チッと舌打ちをしたのは、残念な気持ちだからか、はたまた一瞬でも望みをかけた照れ隠しか。
し「まぁまぁ、無事に婚約成立で良かったじゃありませんか。」
行「あぁ、実にめでたいことだ。」
「みなさん、どうもありがとうございます。」
泰葉は照れながら、頭を下げる。
その様子を皆柔らかい表情で見つめた。
杏寿郎は泰葉の肩を抱く。
杏「このように皆に見守られながら、無事に婚約が決まって良かったと思う!本当にありがとう!」
溌剌と礼を口にする杏寿郎に、何故か笑いが起こった。
杏「む?何故笑う?」
天「いや、お前らしいなと思ったら笑えてきちまってな。
特に訳はねぇんだが。」
肩を震わせながら天元はそう言った。
久しぶりに会って杏寿郎らしい態度が、何故か皆のツボに入ってしまったようだ。
煉獄家と、泰葉には疑問符しかなかった。