第53章 予想外
3本目。
これで決着がつくだろうか。
千寿郎は懐中時計を見つめ、今日一番で緊張した面持ち。
千「では、よろしいですか?」
千寿郎の声かけに頷く両者。
千「3本目、はじめ!!」
3本目は両者とも積極的だった。
始めの合図とともに互いにグッと飛び出し、ガンッと木刀を打ち付ける。
最初から激しい打ち合いを始め、けたたましい音が響き渡る。
木刀を弾き合えば、泰葉たちの方へ杏寿郎が飛んでくる。
…かと思えば槇寿郎も飛んでくる。
それほどに激しい打ち合い。
隊士同士の手合わせでもなかなか無い戦い。
「炎の呼吸、こんなにじっくり見たのは初めてだわ。」
千「…いつもは、戦いの中ですからね。
じっくり見ている余裕もないですよね。」
千寿郎も正直、呼吸を使ったここまでの戦いを見たのは初めて。
し「でも…泰葉さん、この攻撃の中に入って行ったのよね?」
無限列車の戦いの日、確かにこの杏寿郎の攻撃に入って行った。
今となっては、よく入ったな…と思わずにはいられない。
「あの時は…そうね。入って行ったわ。」
天「俺は…入りたくねぇな。」
その言葉には皆が頷いている。
すると、2人の動きに変化が出る。
随分と距離を取り合う両者。
一体どうしたのか。
そして、グッと踏み込み、体を捻る。
伊之助では無いがビリビリと感じる闘気。
「…まさか!この構えは…!!」
「皆さん!!出来るだけ離れて!!!」
泰葉が叫び、周囲は慌てて後ろに飛び退き、出来るだけ離れた。
その瞬間、杏寿郎と槇寿郎の声が響き渡る。
『炎の呼吸 奥義!!』
天「…ま!バカじゃねぇの⁉︎」
『玖ノ型!』
『煉獄!!!!』
ドォォオオン!!!!
両者から激しい炎の渦が巻き起こり、通ったところは地面から抉れるような斬撃の跡が残る。
龍のような攻撃が放たれ、ぶつかり合った瞬間には衝撃が大き過ぎて、皆身を護らなければならなかった。
辺りの空気がパラパラと落ち着き始めた頃、ようやく目を開けることを許される。
…まさか、ここで煉獄を出すとは…。
泰葉は結果も気になるが、怪我が無いかが心配だった。
砂煙で様子が見れない。
しばらくして、やっと砂煙が落ち着き始める。