第53章 予想外
激しい打ち合いは続き、このまま時間が10分になり終わるのか?
と周囲が思っていると…
杏「伍ノ型 炎虎!!」
ゴウッと杏寿郎の技から炎の虎が現れた。
杏寿郎の出す虎は、放たれた途端に猛威を振るう…まさに猛獣だ。
この虎に対抗するのは…
槇「伍ノ型 炎虎!!」
槇寿朗の技から飛び出したのは、同じく炎の虎が牙を剥く。
槇寿朗の虎は静かに近寄り、いざという時に飛び掛かる狩りの名手というところ。
両者から飛び出したのは虎はガチィっと噛み合い、自分の力を相手に見せつけていく。
熱風が吹き、見物人たちの髪を靡かせた。
泰葉の短い髪も巻き上がるように靡く。
あまりの勢いに目を閉じた泰葉たちだったが、目を開くと杏寿郎と槇寿朗の手には木刀が握られたままだった。
その木刀はがっちりと噛み合い、合わさったところは欠けて食い込んでいる。
千寿朗は慌てて懐中時計を見る。
10分だ。
千「…10分です!引き分け!引き分けです!!」
まさかの引き分け。
この結果は正直予想外だった。
実力者だったとしても、現役の柱だった杏寿郎とほぼほぼ互角の戦いをしている槇寿朗。
そして、その相手でも威厳を損なわない戦いぶりの杏寿郎。
これは本当にどちらが勝つのか分からなくなってきた。
無「もし…お父さんが勝ったら…、だれが泰葉を貰います?」
無一郎がポツリと口にする。
実「そんときは俺らで戦って勝ちを決めるしかないだろうがァ。」
天「…それなら俺も派手に参加するぜぇ。」
義「…俺も参加しよう。」
そんな話を始める4人。
まだ泰葉を諦めきれていないようだ。
し「それ、泰葉さんの気持ちはどうするんです?」
蜜「そうよ、それに、きっと負けないと思うわぁ!…負けちゃダメだもの!!」
そんな会話をしてるとは思わず、泰葉はまた濡れた手拭いを渡しに行く。
「お疲れ様です。」
杏「ありがとう!!」
槇「はぁ、はぁ。ありがとう。」
杏寿郎も多少息を切らしてはいるが、やはり槇寿朗の方が体力にきている様子。
「ご無理はなさらないでくださいね。」
槇「問題ない。」
槇寿朗は笑う。
その表情はとても楽しそうだ。