第53章 予想外
その後も激しく打ち合い、まもなく10分が経とうとしている頃
2人の技の出し合いで、砂煙が立った。
そして、上に飛び上がる木刀。
どうやら一回戦の勝負がついたようだ。
義「…どうなったんだ?」
次第に砂煙が落ち着くと、木刀を握り続けていたのは杏寿郎だった。
ヒュンヒュンと音を立てながら回り落ちてくる木刀をパシッと取る槇寿郎。
千「杏寿郎、一本!」
まず一回戦は杏寿郎に入った。
泰葉は濡れた手拭いを2人に手渡す。
「お二人とも、大丈夫ですか?」
その言葉にニカッと笑う2人。
杏「あぁ!問題ない!流石です、父上!
ここまで戻されていたとは!!」
槇「直ぐにやられたのでは示しがつかないからな。できる限りの鍛錬をした。」
そう、槇寿郎は杏寿郎とずっと手合わせをしたかったのだ。
その為には互角にならなければつまらない。
人知れず鍛錬に励んでいた。
しかし、この一戦で互いに力の具合、攻め方の傾向などを掴んだ。
第2回戦からが本番と言えよう。
にこやかに話しながらも、闘気がぶつかり合っているのを感じた。
「お怪我だけはないようにして下さいね。」
『うむ、善処しよう!』
2人の声が揃った。
10分ほどの休憩を挟み、千寿郎が声をかける。
千「お二人とも、そろそろよろしいですか?」
槇「あぁ、2回戦と参ろう。」
杏「はい!よろしくお願いします!!」
また2人はギッと目つきをかけて、対峙する。
これは親子で出し合う空気ではない。
本気の戦いである。