第53章 予想外
「ん?…はーい。」
泰葉が玄関を開けるとそこに立っていたのは
「う、宇髄様⁉︎」
天「よぉ。元気してたか?」
杏「む!宇髄か!どうした!」
天元は隊服姿の杏寿郎を見て一瞬驚いたが、ニッと口角を上げる。
天「いいねぇ。気合いも入るってか!
歴代炎柱の戦いが見れるってんで来たんだよ。」
これは餞別だと酒を泰葉に渡す天元。
杏「…その話をどこから聞きつけたのだ?」
2人の手合わせは昨日決まったばかりの事。
杏寿郎はもちろん、誰も誰にも話をしていない。
天「俺の情報網を甘くみんなって。時間は?もう始まるのか?」
杏「流石君だな!!9時半からを予定している。場所は裏山だ!!」
天元「了解、楽しみにしてるぜぇ。」
ニコッとして左手をひらひらさせながら、後にする天元。
見学をするつもりらしい。
(確かに滅多に見られることじゃないものね…)
泰葉は他の鬼殺隊士たちも見たかっただろうな、と考えながら玄関を閉め振り返った。
すると、陰からこそっと顔を出す槇寿郎。
…どうやら、恥ずかしくて隠れていたようだ。
「槇寿郎様…後にその姿で会いますよ?」
槇「まったく、あの音柱はどこから嗅ぎ付けてきたのか…」
少し難しい顔をして頭を掻いた。
そして泰葉はある事に気づく。
「首元をお止めしてもよろしいですか?」
首元…ホックがついており、そこがまだ止まっていなかった。
槇「…あぁ、頼む。」
少し前屈みになり喉元を泰葉に向けた。
そっとホックを止める。
泰葉の目の前には槇寿郎の輪郭。
時々喉仏が上下する。
一度、槇寿郎に横抱きにされた事もあったが、ここまで顔が近づいたことはなかった。
杏寿郎にも色気を感じるが、それとは違い大人の色気を感じる。
止め終えると、槇寿郎が少し動き目が合った。
髭は綺麗に剃られ、杏寿郎より細めな綺麗な瞳。
そんなつもりはなかったが、なんだか照れてしまう。
槇「ありがとう。」
「い、いえ。」
ほんのり頬が色づき、照れている泰葉に気づいた槇寿郎も、ちょっと頬が赤くなる。
それを見ていた杏寿郎。
「泰葉さん!俺のもいいだろうか!!」