第52章 恋敵
智「さぁ、着きましたよ。
まだ時間には余裕がありますね。」
外は日差しが暑かったが、風があって日陰に入れば涼しく感じられた。
智「これが、野菜で、こっちには果物が入っています。
佐久間家のお爺さんが下さったものだ。」
「こんなにいいの?」
智「君たちにとくれたんだから、貰っていきなさい。」
そう言って渡された風呂敷はパンパンだった。
あれは、これは…とやってると、人の気配がした。
泰葉が振り向こうとした時、杏寿郎はまだ前を向いたままだったが
目が…変わった気がした。
そう思いながら振り向くと、浩介が立っていた。
「あれ、こうちゃん…」
浩「…泰葉、まだ時間あるか?
ちょっと話がしたいんだ。」
「え…」
泰葉は杏寿郎を見る。
杏寿郎は、泰葉の目を見て頷いた。
その瞳の光はいつも以上に強かった。
杏寿郎も許可したので、泰葉は浩介について行く。
これを心配していたのは、千寿郎。
浩介について行く泰葉を見て、千寿郎も只事では無いと分かった。
千「あ、兄上!あの方は…?」
「この野菜たちを下さったお家のお孫さんだ。
…泰葉さんの…幼なじみの様な人だな。」
千寿郎は、昨日兄が話して機嫌を損ねた原因か、と察した。
杏寿郎の手を見ると、ぎりッと拳が握られている。
杏(大丈夫、信じるんだ。)
千寿郎はその拳の上からそっと手を握った。
千「ちゃんとこちらに戻ってきてくれますよね。」
杏「…あぁ。戻って来てくれるさ。」