第52章 恋敵
『いただきます!』
賑やかな朝食が始まった。
杏寿郎の「うまい!」が木霊する。
花「杏寿郎くんのうまいが聞けなくなるのは寂しいわ。」
智「ならば私が言おうか?」
花「これは杏寿郎くんだからいいのよ。」
そんな夫婦の会話を笑顔で見る泰葉。
(私もこんな夫婦になれるかしら。)
きっと杏寿郎のことだ。いつまでも「うまい!」と褒めてくれるのだろう。
(私も杏寿郎さんに感謝の気持ちを忘れないようにしなきゃ!)
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楽しい時間はあっという間。
今の時刻は11時。
智「忘れ物はないかな?」
杏「大丈夫です!」
花「気をつけてね。何があればすぐに連絡してね。」
「うん、ありがとう。お母さん達も何があったら言ってね。」
花枝は車の人数の関係でここでお別れだ。
花「寂しいけど…、煉獄家の皆さんとなら大丈夫ね!
…泰葉、自分に正直に生きるのよ。」
「…?うん。分かった。」
杏寿郎と同じ事を言うな、と思いながら、花枝に微笑んだ。
槇「では、またこちらからもご連絡します」
花「はい。お気をつけて。千寿郎くんも、今度は寝ないように楽しんで帰ってね。」
千「はい!お世話になりました!」
深々と頭を下げて、車に乗り込んでいく。
花「またねー!」
大きく手を振る花枝に泰葉も手を振って、一行は駅へと向かった。
次第に杏寿郎は気が気でなくなってきた。
浩介のことだ。
杏(列車の時間は伝えた。家に来なかったところを見ると、駅にいるのか?)
少しずつ駅が見えてくると、やはり緊張してくる。